International Society of Geriatric Oncology (SIOG) Advanced Courseにおける研修報告
研修期間 | 2018年11月16日~11月18日 |
報告者 | 山口大学医学部附属病院 腫瘍センター 准教授 吉野 茂文(医師) |
International Society of Geriatric Oncology (SIOG) Advanced Course の修了要件としてSIOGのAnnual Conferenceに参加し、Phase1の研修(2018年6月27日~30日、イタリア、トレヴィーゾ)で学んだことを元に将来計画の立案をポスター発表する義務があり、またConference中に実施される筆記試験に合格する必要がある。このPhase2の研修を終えることにより初めてAdvanced Courseの修了証が授与される。今回アムステルダムで開催されたPhase2の研修に参加してきたので報告する。
SIOGの第18回Annual Conferenceは2018年11月16~18日にアムステルダムのRAI Convention Centerで開催され、41か国から604名の参加があった。私は11月16日と17日にあったポスターセッションで発表し、Phase1の研修修了者やFacultyの先生方とディスカッションを行った。
ポスター発表の内容としてはPhase1の研修で学んだことを基礎に、老年腫瘍学に関して今後どのような教育をしていくのか、あるいはどのように臨床に生かしていくのかなどの計画を盛り込むことが求められており、これらの内容につき発表した。まず中四がんプロにおけるeラーニングシステムにつき紹介し、このeラーニングを活用して今後コンソーシアム内で、Phase1の研修で学んだ老年腫瘍学に関する基礎と臨床を教育していく旨を発表した。
また臨床面においては、山口大学医学部附属病院の外来化学療法室で治療を受けた75歳以上の高齢がん患者におけるGeriatric Assessmentの結果につき報告した。Geriatric Assessmentとしては簡便なスクリーニングツールであるG8を用いて評価し、75歳以上では58人中32人(55%)がUnfitと判定されたことを報告した。
11月18日の最終日にPhase1の研修参加者と共にmultiple choice式の筆記試験を受けた。老年腫瘍学と老年病学に関する約20問(30分)の設問であったが、長文臨床問題もあり結構難問であった。どうなることかと気を揉んだが、なんとか合格しSIOG Advanced Courseの修了証を授与された。
Phase1~2研修を通じて
1.研修先で学んだこと
・世界の高齢者腫瘍学の情勢(日本、アジアは取り組みが遅れている。)
・高齢者がん治療におけるGeriatrician(老年腫瘍医)の役割について
(世界的には腫瘍内科医や外科医とGeriatricianが連携を取りながらがん治療を進めている。)
・高齢者の身体機能、精神機能の評価方法(見た目だけでは判断できない。)
・高齢者がん治療における、身体・精神機能評価の重要性
・高齢者がん治療における、身体・精神機能を考慮した治療戦略の立て方
・高齢者化学療法における副作用予測と投与量の決定
・高齢者がん治療におけるPrehabilitation(治療前のメディカルサポート)とRehabilitationの重要性
・高齢者がん治療における臨床試験の計画方法
2.それをどのように教育に生かすか
中四がんプロコンソーシアムにおいて、高齢者がん治療の重要性(若年者治療との違い)を講義する。
そのためのeラーニングコンテンツを作成していく。
3.それをどのように臨床に生かすか
山口大学医学部附属病院においてがん治療を受ける高齢者の身体・精神機能の評価を行っていき、
キャンサーボードで症例検討を行う。
4.それを実行するための方策
・高齢者がん治療の重要性の講義をし、eラーニングコンテンツを作成する。
・山口大学医学部附属病院においてがん治療を受ける高齢者の身体・精神機能の評価を開始し、
高齢者の身体・精神機能の評価体制を整えていく。