Grey Nuns Community Hospital, Royal Alexandra Hospital,Norwood Hospice Palliative Care, Cross Cancer Institute研修報告
研修期間 | 2013年2月11日~2月15日 |
参加メンバー | 愛媛大学 佐伯 由香(看護師) 四国がんセンター 平田 久美(看護師) |
報告者 | 愛媛大学 佐伯 由香 |
研修内容 | Edmonton Zone Palliative Care Program |
研修目的 | カナダのPalliative Careがどのように機能しているか、またそれにおける看護職の立場や役割を学ぶ。 |
1日目(2月11日)
9:00~10:30
Grey Nuns Community Hospital Health CentreでClinical Nurse SpecialistのSandra Youngから、Edmonton Zone Palliative Care Programについての説明を受ける。どんな組織がこのプログラムに関わり、どのような役割を果たしているのか、また、患者の状態の評価に用いる評価指標についても説明を受けた。
10:30~12:00
Clinical Nurse EducatorのCharlotte Poolerから、Clinical Nurse Educatorの役割やカナダの看護教育について説明を受けた。Palliative careにおける看護職者へのレクチャーの内容についても説明を受けた。
13:00~16:30
Tertiary Palliative Care Unit(TPCU)を見学した。Clinical Nurse EducatorのDeanne Gerhardtからこの病棟について、そしてDeanneの仕事について説明を受けた。彼女は看護学生や新しいスタッフへの教育、さらに現在いるスタッフへの教育も担当している。さらに世界各国から研修生が来るため、その対応も行っている。この日はこの研修に一緒に参加した平田久美さんと行動した。
2日目(2月12日)
8:30~10:00
Grey Nuns Community Hospital Health Service CentreのCommunity Consultant Teamが行っている勉強会に参加した。当初の予定では、Clinical Nurse ConsultantのShari Youngに会う予定であったが、所用ができたため変更となった。勉強会はNurse Consultant 5名、医師1名、研修医1名の合計7名で行っていた。研修医以外のスタッフが各自文献を紹介し、その研究・報告内容についてディスカッションを行った。
11:00~14:00
Palliative Nurse ConsultantのSueに付いて、患者宅へ家庭訪問を行った。Sueにとっても初めて訪問する患者で、まずはご家族と話をする。続いて、患者本人に会い、昨日いただいた評価指標に従ってSueがアセスメントを行っていた。その後、ご家族にホスピスの情報を渡し、家を出た。この間約1時間程度であった。今回の訪問はホスピスへの入所が適切か否かを判断すること、そして家族をサポートし情報提供するための訪問であった。
3日目(2月13日)
8:30~16:30
University of Alberta HospitalのPalliative Care Programに参加した。Palliative Nurse Consultant 3名、Physician 1名の合計4名で構成されたチームであった。主にPalliative Nurse ConsultantのGaryに付いて、午前・午後合わせて5名の入院患者を訪問した。また、Physicianから依頼があった新しい患者については、Palliative CareチームのPhysicianのGaryに付いて最初の対応を見学した。昨日、家庭訪問したSueが行った方法と全く同じで、同じ評価指標を用いて観察・アセスメントしていた。この後、主治医と話し合い、内容は翌朝のミーティング時に他のNurse Consultantに伝えられ、その後の方針を決めるという。また、Nurse Consultantは毎日自分が担当している患者を訪問して患者の状態や使用している薬剤を確認している。この情報は毎日のミーティングでディスカッションされる。
4日目(2月14日)
8:30~16:30
Royal Alexandra Hospital Palliative Care Programに参加した。Dr. Yoko Tarumiから概要を聞き、昨日訪問したU. of Alberta Hospitalの方法と同じであることを確認した。新しい患者がいたので、Dr. Yokoについて病室を訪問したが、検査に行っており不在だったので、Nurseが行う患者訪問に同行した。
今日は、昨日同様、病院におけるPalliative Care Teamの役割、チームにおけるPhysicianやNurseのそれぞれの役割、連携の仕方を学んだ。しかし、昨日とは違い、病院の周辺に住んでいる住民が2つの病院で異なっており、同じ大きな病院でも患者層が異なること、Palliative Careの対象となる患者数も多かった。また、がんだけでなく心不全や脳血管疾患、COPDなど他の疾患も対象となっている。Dr. Yokoも初めての患者だけでなく、Palliative Nurse Consultantから相談されると、検査データ等を確認し、ナースと一緒に患者訪問を行っていた。
5日目(2月15日)
8:30~12:00
Southwest Home Care Officeに所属しているNurse PractitionerのPaula Bodnarekに会い、彼女が行う家庭訪問に同行した。訪問先では、患者の褥瘡の処置やサービスに対する支払いのことなど相談にのっていた。また、ALS患者に食事を提供しているRNから患者情報を聞くなどしている。Paulaが担当している患者は約50名。したがって、訪問する時間や頻度に限界があるようだ。
Nurse PractitionerのPaula Bodnarekと訪問した患者宅
13:30~16:30
Royal Alexandra Hospitalの近くにあるHome Living North & North Eastで働いているClinical Nurse EducatorのLeah Doheiに会い、彼女が訪問する患者宅に同行した。そこでは、RNがすでに来てフットケアを行っている最中で、患者の情報を得ることと、患者自身に食事や疼痛のことなどをアドバイスしていた。また、それ以外にも新しい看護スタッフに対しての教育も担当している。
今日はCommunityにおいてどのようなスタッフによって、どのようにPalliative Careが提供されているか学んだ。
まとめ
1. 研修先において学んだこと
EdmontonにおいてPalliative Care Programが大きなシステムとして確立して、提供されていた。病院、TPCU、コミュニティ、ホスピスとの間でうまく情報交換し連携し合っている。ナースの役割も今回お世話になったナースだけでもClinical Nurse Specialist、Consultant、Educator、Nurse Practitioner、RN、そして他にLicensed Practical Nurseもおり、役割分担がかなり明確に分かれている。したがって、各看護職者は自分が何をすべきなのかちゃんとわきまえており、無駄がない。ここまで徹底して分担できるということは、それぞれの立場を尊重・理解しているからできることで、教育的・社会的側面からも認知されているためであると考える。また、評価指標も同じで統一されているため患者の情報も共有しやすく、それを評価するのも医師だけでなく看護職者も行っており、Palliative Careの目指している方向が同じであることがうかがえた。
2. それをどのように教育に生かすか(いつまでに、どのような形で、どこまで)
日本では看護職者は基本的にRNで、看護協会が認定した専門看護師、認定看護師がいるものの、その役割やできる内容が病院によって異なっているのが現状である。また、病院、TPCU、ホスピスでのPalliative Careのやり方も異なっているが、評価指標は共通のものを使用して情報を共有している。このようなEdmontonでのPalliative Care Programの概要ならびに研修で得た看護職者の役割の違いを次年度の講義内容に加え、どのようなend of lifeが望ましいか、どのようなcareを提供するのがよいか学生に考えさせるようにしたい。また、それを元にして実習に臨むよう推奨したい。
3. それをどのように臨床に生かすか(いつまでに、どのような形で、どこまで)
認定看護師や専門看護師の役割を再度確認し、医療スタッフが共通の認識を持つことが重要である。また、RNでもPalliative careにおいてConsultantとしての役割を果たすことができる可能性を考える。
4. それを実行するための方策
Palliative Careとは何か、どのような職種が関わり、それぞれの役割は何か、どのようなサービスが望ましいかなど、まずは医療職者を養成する教育の段階で興味や問題意識を持たせる必要がある。また、教育現場と臨床現場との情報交換を密に行うことで、お互い推進すべき点や改善すべき点を評価する機会を持つ。
文責 愛媛大学大学院医学系研究科看護学専攻 佐伯 由香