Samsung Comprehensive Cancer Center研修報告
研修期間 | 2010年12月27日~12月28日 |
参加メンバー | 岡山大学 笈田 将皇(医師)、武本 充広(医師) |
報告者 | 岡山大学 笈田 将皇 |
中国・四国広域がんプロ養成コンソーシアムのFD研修プログラムとして、2010年12月27日~28日に渡って、韓国ソウル市内のサムスン医療院における医学物理(放射線治療)の研修を行って来たので報告する。
サムスン医療院は韓国のBig4(他にソウル大学付属病院、ヨンセイ大学付属病院、アサン医療センター)と呼ばれる施設の1つとされている。本研修を行った放射線治療部が含まれる施設のSamsung Comprehensive Cancer Centerは2008年から稼働し、地上11階、地下8階からなる。隣接してSamsung Medical Centerや研究棟があり、非常に大きな建物であった。
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研修は、コーディネータのHee Chul Park先生、部長のDoo Ho Choi先生との挨拶、病院案内に始まり、講義、外来診療もしくは患者治療、計画の研修、議論を2日間に渡って行った。
第1日目(12月27日)
関係者からの挨拶
Doo Ho Choi部長
Hee Chul Park 先生(コーディネータ)(写真1)
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Samsung Medical CenterとSamsung Comprehensive Cancer Center施設見学
Jinsung Kim医学物理士
Samsung Medical Centerにおける放射線治療の現状について
Youngyih Han主任医学物理士
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昼食
放射線治療部門(リニアック室、Tomotherapy、小線源治療)における見学
Young Hwan Park技師、Ki Weon Song主任技師、Sang Gyo Ju医学物理士
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第2日目(12月28日)
KOSTRO(韓国放射線腫瘍学会)での活動と韓国の放射線治療の現状について
Seung Jae Hoh先生
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(笈田)IMRTの線量解析について
Jinsung Kim医学物理士
(笈田)Samsung Medical Centerにおける体幹部定位放射線治療とIGRTの運用
Youngyih Han主任医学物理士
(笈田)Tomotherapyでの線量測定実習
Young Hwan Park技師、Ki Weon Song技師、Sang Gyo Ju医学物理士
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(武本)外来診察
Doo Ho Choi先生
昼食
(笈田)治療計画実習
Sang Gyo Ju医学物理士
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(笈田)質疑応答
Jinsung Kim医学物理士
(武本)外来診察
Doo Ho Choi先生
研修内容まとめ
講義については、まずサムスン医療院における放射線治療の現状と医学物理士の教育や活動についてYoungyih Han主任医学物理士より、またKOSTRO(韓国放射線腫瘍学会)での活動と韓国の放射線治療の現状についてSeung Jae Hoh先生にお話頂き、韓国の放射線治療システムの現状について理解を深めることができた。また、臨床応用に関する内容として、IMRTの線量解析についてJinsung Kim医学物理士より、サムスン医療院における体幹部定位放射線治療とIGRTの運用についてはYoungyih Han主任医学物理士よりお話を頂き、日本の状況との比較についてお互いに議論することができた。臨床実習については、放射線治療部門(リニアック室、Tomotherapy、小線源治療、治療計画室)における研修およびIMRTの線量測定をYoung Hwan Park技師、Ki Weon Song主任技師、Sang Gyo Ju医学物理士の下で、外来診察についてはDoo Ho Choi先生、Seung Jae Hoh先生、Hee Chul Park先生の下で行わせて頂き、韓国の放射線治療の実際について良く知ることができた。
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サムスン医療院の放射線治療装置台数は、リニアック(写真②)が6台(さらに1台を設置準備中)、Tomotherapy(写真③)が1台、治療計画用CTが2台、X線シミュレータが1台、HDR小線源治療装置が1台で、1日の放射線治療患者数は320~360名であった。岡山大学病院(リニアックが3台、同室治療計画用CT-X線シミュレータが1台、 HDR小線源治療装置が1台、1日の照射人数が70~90名程度)に比べて、稼働時間は午前7時~22時と2倍程度、装置台数は2.5倍程度であり、患者数はそれに比例した数であった。人材面で比較すると、放射線腫瘍医15名(Resident等を含む)、放射線治療専門看護師11名、医学物理士5名、線量測定技師7名、照射技師31名、事務員(秘書を含む)5~6名であった。岡山大学病院の放射線治療部門では放射線腫瘍医が5名、放射線治療専門看護師3名、診療放射線技師8名(うち、医学物理士2名)であり、アメリカよりもマンパワー不足であると言われる韓国の比からしても、日本の状況は厳しいことがわかる。
放射線治療の実践に関しては、日本と比べてほぼ同等水準であるが、アメリカの状況と同様に日本に比べて先進的な放射線治療が選択的にかつ積極的になされている印象があった。IMRTやIGRTなど先進的な放射線治療が行われる患者割合に関しては、予想していたよりも高率ではなく、日本の先進施設での割合と同程度であった。また、人材育成に関しては実践教育としてOJT(オンザジョブトレーニング)が普及しており、放射線腫瘍医、医学物理士ともにアメリカの水準に照らし合わせてResident研修を認定システムと連動して行っているとのことであった。
韓国の放射線治療技術職はアメリカと同様に照射技師(Therapist)、線量測定技師(Dosimetrist)、医学物理士(Physicist)が業務上、明確に区分されていた。しかし、資格制度はアメリカとは異なり、照射技師と線量測定技師は診療放射線技師が従事し、医学物理士は理工学系大学院出身者と大学院を修了した診療放射線技師が従事していた。このことから、韓国は日本とアメリカのほぼ中間に位置する放射線治療システムであることが伺われた。
韓国の放射線治療施設では現在、全施設(約70施設)に医学物理士が配置されているとのことであったが、韓国全体で医学物理業務を行うスタッフは300名程度、うち医学物理士の有資格者は20%程度とのことであった。議論の中では、韓国の放射線治療システムは、最近まで日本とほぼ同じ状況だったと言われ、国内での誤照射事故がきっかけとなり医学物理士の配置が本格化したとのことであった。そのため、サムスン医療院の医学物理士はその多くが若手で経験も浅く、治療計画や日常的なQAなど実践業務に関しては中堅の診療放射線技師が医学物理士となってカバーしている印象があった。
日本においても医学物理士や専門技師など放射線治療専門技術者の必要性が学会等で議論され始めているが、今後さらにその声は大きくなることが予想される。こうした状況と重なるように診療放射線技師養成校は、短大から大学へ、さらには大学院へと、わずか10年程度の間に急速に教育システムが高度化している。大学院教育を受けた人材は高度専門技術者や研究者として活躍することが期待され、放射線治療への人材活用も有用であると思われる。臨床現場で抱えている課題も多いが、がんプロコンソーシアム内で展開されている教育プログラムは貴重な資源であり、有効に活用して現場に還元すべきとされる。今後も引き続き、大学病院や地域の関連病院と連携を図りながら課題を一つずつクリアし、がんのプロフェッショナルに相応しい人材育成を行いたいと考える。
本研修を行うにあたり、コーディネータのHee Chul Park先生、スタッフの皆様をはじめ、事務の皆様のご尽力があって、このような研修が短期間のうちに実現しました。心より御礼申し上げます。
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文責 岡山大学大学院保健学研究科 笈田 将皇