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FD研修

ESTRO School研修報告

研修期間2009年12月6日~12月10日
参加メンバー徳島大学 川下 徹也(診療放射線技師)、川中 崇(医師)、富永 正英(診療放射線技師)
高知大学 刈谷 真爾(医師)、佐々木 俊一(診療放射線技師)
報告者高知大学 佐々木 俊一

この度、中国・四国広域がんプロ養成プログラムとして、ベルギー国内ブリュッセルのERASMUS大学でのESTRO School teaching course on Image-guided Radiotherapy in Clinical Practiceに参加したので報告する。

今回の研修には、徳島大学3名、高知大学2名の計5名が参加した。各大学において旅程を確保し、その中の一人はアメリカから直接ブリュッセルへ参加というハードなスケジュールをこなす中で、4名のメンバーは現地に向けて5日(土)に日本を出発し、現地時間の同日遅くに到着した。

1日目(12月6日)

当日の朝は、証券取引所横のバス停よりERASMUS大学までの送迎バスが3台出ていて、およそ20分かけて現地まで移動した。このバス停はブリュッセルでも中心部で、ESTRO側に紹介されていたホテルから徒歩8分ほどのところにあり、ほとんどの参加者が利用していた。

メンバーはESTRO School開催会場のERASMUS大学へ現地集合した。受講者は受付にてバッグに入った600ページあまりのテキストとネームプレートを受け取り、研修が始まった。研修には世界35カ国・159名の参加があり、スタッフと合わせて180人あまりでの研修となった。近くの国からは、ベルギー(11名)・インド(10名)・オランダ(13名)・ポーランド(12名)・スペイン(19名)といった10名を越える参加もあり、また遠くからは、オーストラリア(1名)・ニュージーランド(2名)・南アフリカ(2名)・タイ(2名)という参加もあった。

8:30~18:00

ひとつの講義はおよそ40分で10分の質疑応答という時間配分になっており、スケジュール的にはかなりハードだと思ったが、途中に休憩時間を30分割り当てられていた。休憩時間にはコーヒーやジュース、ベルギーのお菓子等のサービスがあり、とても楽しく過ごすことができた。

最初の講義では、なぜIGRTが必要なのか、また、治療を行う上での各々の業務の役割、そして、歴史的な観点からの講義が進んでいく中で、機械の進歩とともに業務の複雑さやIGRTへ進んでいく過程が示されていた。

この日の午後は研修で提供されたお弁当を持って、申し込みの時に選択した4つのグループに分かれ、送迎のバスに揺られながら4カ所の施設へ赴き、見学・研修を行った。1グループは40名ほどで、我々の行ったLEUVEN大学病院では、その施設でのIGRTの概要とQAについて説明を受け、実際にIGRTを行う上での基礎的な実習としてOBI装置のQAやコーンビームCT(以下:CBCT)によるフィッティング、RTPS装置のデモを見学した。

初日の朝の講義室の様子
初日の朝の講義室の様子

2日目(12月7日)

この日の朝も、世界遺産グラン・プラスの近くの証券取引所より出る送迎バスに乗り、研修会場まで行った。ブリュッセルの冬は日照時間が短く、到着する頃に夜明けを迎えた。

8:30~

2日目の講義はCBCTについての詳細な説明がなされていた。特に肺の呼吸に対する治療ケースでは、様々な方法での最適なセットアップの指針が解説されていた。また、これらの説明はライナックの装置に限らず、サイバーナイフやトモセラピーなどについても同様であった。ここでは、4DのCBCTによる呼吸同期の有用性を特に思い知らされた。

午後からは2時間の講義の後、前日の4グループに分かれて別の教室に行き、40名ほどでworkshopを行った。内容は、サイバーナイフ装置やノバリスのCBCTやOBIの操作などを、実際の臨床について日を追ってビデオしたもので、一連の業務として通して見るものである。治療開始の数週前からの治療説明の場面から、計画用CTに撮影、治療開始の当日の様子までを具体的に学ぶことができた。Workshopはさらに場所を変えて行われ、計4本のビデオを見た。実際の仕事では、ここまで多くの体験はできないと思うので、とても貴重な経験となった。

この日の終了後は、敷地内にあるHealthCityというフィットネスセンターとボーリング場の施設でお酒を飲みながらボーリングを楽しんだ。こういった施設が大学の敷地内にあるのもヨーロッパならではないかと思った。

3日目(12月8日)

8:30~

この日も日の出前の通学の後、講義を受けた。この日は、van Herk講師による、IGRTにおける誤差とマージンの取り方の講義を受けた。そして、講師自ら提唱するPTVマージンの指針となる、PTV margin=2.5Σ+0.7σ(Σ=systematic errors, σ=random errors)の内容を具体的に細かい所まで講義していただいた。また、PTVの取り方と如何にマージンを少なくしていくかとのテーマのもと、前日に講義の主であったCBCT等の症例や呼吸等による臓器の動きに対して、CT画像の分析やMRIやPETなどの他のモダリティとのフュージョンによるマージンの違いなど、あらゆる講義を受け、休憩時間同様にお腹が一杯になった。

午後からは前日と同様に2つの講義の後、workshopにてMV-CTやトモセラピー、またOBIシステムやELEKTA Synagyシステムについてのビデオを見て討議を行った。

4日目(12月9日)

8:30~17:00

講義が終日行われるのはこの日が最後となった。この日は頭頚部の誤差の修正方法や上腹部の各モダリティによる呼吸同期の違いの講義があり、また骨盤部の中でも前立腺や子宮の動きに対する実際を具体的にかつ臨床的な観点から見る講義であった。この日の講義はこの(これまでの)内容で視点を変えながら、また様々な症例を交えながら、休憩を挟んで行われ、詳細な部分に及ぶ講義に学ぶ事が多かった。

この後特別講義として、RTT、Clinicians、Physicistsに分かれて講義を受けた。それぞれの立場でIGRTを行う際の役割の中で、大切な部分を討議した。

20:00~

1時間ほどの特別講義の後は解散となったが、20:00からブリュッセル中央部に近い駅前のベルギー漫画センターにてディナーが行われた。日本人として早めに着いておこうと思い到着したものの、会場の準備もできておらず、20:00からの予定は21:00頃に会場の準備が整い、ディナーが始まった。始まってみれば高級なコースディナーであった。展示品が真横にあるような場所での食事に、自身の常識をくつがえされた。この歓談の中でも日本との職種の違いなどの話ができ、有意義な文化交流ができた。

5日目(12月10日)

8:30~12:00

最終日のこの日は、治療精度向上の為の患者への前処置からポジショニング、定位放射線治療とSBRTについての講義があった。その後パネルディスカッションがあり、講師一同がパネラーとなって会場からの質問に答えていた。

最後は試験があった。60分ほどの選択式の試験で、微妙なニュアンスは最後まで不明だったが、選択式なので回答はできた。

ブリュッセルの文化とESTROのスタッフに見守られながら研修を終えたが、必要最小限のTarget volumeに如何に近付けていくか、そのための最新機器であったり、知恵であったり、情熱であったりする。全体を通してこのことを深く感じた。

研修に参加したメンバー
研修に参加したメンバー

まとめ

本研修は、わが国でも行われつつあるIGRTについて詳細に研修できる内容であった。その技術は細分化し、高度な治療装置やMRI・PET等の他のモダリティの参入により、さらに複雑化している。また臓器別の高度な放射線治療が行われるにあたり、ますます業務の細分化がなされていくならば、放射線腫瘍医、医学物理士、照射技師の協力と努力だけではなく、厚い人材層が必要となってくる。この解決に向け高度教育の必要性はさらに大きくなっていると思われる。こうした問題解決に向けて、さらに活動を(研鑽を積み)続けたい。

この度は、ESTRO SCHOOLスタッフの皆様をはじめ、事務の皆様、参加メンバーの皆様のご尽力により有意義な研修ができました。心より御礼申し上げます。

文責 高知大学医学部附属病院 放射線部 佐々木 俊一

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