がん研究会有明病院における研修報告
研修期間 | 2019年11月11日~11月15日 |
報告者 | 川崎医科大学附属病院 管理栄養士 井上 幸香 |
1日目(11月11日)
9:30~10:30 栄養部内・厨房見学
10:30~12:00 病院見学
13:00~13:30 管理栄養士ミーティング参加
- 院内勉強会・学会発表内容の確認
13:30~14:10 栄養部全体ミーティング参加
- 勉強会「大量調理マニュアル衛生管理についての基本について」
14:10~16:10 緩和病棟患者への管理栄養士の関わり方
- 緩和病棟の特徴
- 栄養管理の方法
- 電子カルテの見方
- ベッドサイドでの栄養指導見学
16:10~17:10 まとめ
- 栄養部内の見学を一通りさせていただいた。厨房では仕込みから配膳までの流れや食品庫などを説明していただきながら見学を行った。厨房内に入る際、管理栄養士も必ず白衣を着替え、帽子2個、マスクを必ず着用してから厨房に入っており、異物混入をしっかり防げる環境が整っていると感じた。病院見学では、どの病棟も窓が大きく、デイルームが広く明るく開放的である事が印象的であった。
- 午後の栄養部ミーティングでは、はじめに管理栄養士と熊谷医師による、栄養部内での連絡事項と管理栄養士が担当する病院内での勉強会・学会発表内容のスライドを実際にスクリーンに映し、当事者による発表が行われていた。全員の前で発表を行い、指摘事項や分かりにくい箇所があれば訂正を行っていた。発表の練習にもつながり、他者も訂正すべきポイントやスライド作成の上で気を付けなければならない事項に対し共通認識を持てていると感じた。
- 緩和病棟患者の管理栄養士の関わりについて指導していただいた。患者さんの嗜好などの希望に合わせられるように、食種・主食・副食・付加食などの種類を多く設けられており、入院患者さんのニーズに合わせた食事を準備されていると感じた。
2日目(11月12日)
8:45~9:00 管理栄養士朝礼参加
9:00~9:20 厨房での朝礼参加
9:20~12:00 婦人科での管理栄養士の関わり方
- 婦人科入院の患者の特徴
- 患者との関わり方
- 栄養指導見学
- 悪液質での栄養減量のタイミング
13:00~16:00 化学療法科での管理栄養士の関わり方
- 化学療法科患者の特徴
- 食思不振患者に対しての栄養ルートの検討
- 栄養指導見学
16:00~17:10 まとめ
- 婦人科では、乳癌術後の患者さんの栄養管理を主にされており、再発防止のための栄養管理が行われていた。病棟業務中に緩和ケアチームのラウンドが行われており、チーム介入している婦人科患者がいれば管理栄養士がラウンドに加わり食事・輸液の相談がなされていた。普段、関わることの少ない疾患患者の栄養管理であったため、勉強になった。
- 化学放射線科では、胃・食道・腸癌に対して化学療法を施行している患者さんがほとんどであり、食事摂取状況低下のリスクが高く必要栄養量確保できないことから低栄養状態に陥るリスクがあるため、栄養状態維持・改善目的での栄養管理が行われていた。入院直後、食事摂取状況はまだ落ちていない時から、食事摂取状況が減少するようであれば、どこまで食事対応ができるか、治療のリスクなどの説明も行われており、患者の不安軽減につながるとともに、早期に栄養介入がなされていると感じた。
3日目(11月13日)
9:15~12:20 胃癌・食道癌術後患者への栄養指導見学
13:00~14:00 乳腺科 リンパ浮腫患者への減量栄養指導見学
14:00~14:20 褥瘡カンファレンス見学
14:20~14:30 NSTカンファレンス見学
14:30~15:20 大腸疾患栄養指導見学
15:20~16:10 褥瘡、NST運営方法の説明
16:10~17:00 まとめ
- 食道癌・胃癌術後患者への栄養指導見学では、主に術後の外来患者への栄養指導であった。術後、体重の減少だけでなく、 INBODYにて体組成の測定もされており、身体計測と採血結果、食事摂取状況を確認しながらの管理が行われていた。摂食時のつかえ感を訴える患者が多く、個々の訴えに合わせて食事・食べ方・水分摂取量の提案がなされていると感じた。
- 褥瘡、NSTカンファレンスは、消化器外科医師、胃外科医師、歯科医師、消化器内科医師、専任看護師、専任管理栄養士、専任薬剤師、病棟看護師で行われており、コメディカルは全患者で意見を発言しており、多職種連携がしっかり行われていると感じた。
- 大腸癌術後の集団栄養指導では、パスで栄養指導予約が入ってきているとの事だったので、栄養指導の必要性が病院全体で認識されていると感じた。
4日目(11月14日)
9:15~12:00 頭頸疾患患者への管理栄養士の関わり方
- 頭頸科患者の疾患割合
- 栄養管理の方法
- 栄養指導・栄養ケア見学
13:00~14:00 呼吸器疾患患者への管理栄養士の関わり方
- 呼吸器疾患患者の特徴と治療
- 栄養ケア見学
14:00~15:30 放射線科患者への管理栄養士の関わり方
- 栄養指導見学
15:30~16:30 給食管理について、全体の栄養管理についての説明
16:30~17:10 まとめ
- 頭頸科での管理栄養士の関わりでは、病棟看護師・担当医師と病棟でしっかり相談・提案をしっかり行われており、患者への的確な栄養管理が行われていると感じた。当院と違い、化学放射線の治療開始前に治療による副作用の説明などを行い、胃瘻造設をほぼ施行しているとの事であった。胃瘻造設をしても経口摂取はできるだけ継続し嚥下機能が低下しないような指導も行われていた。栄養剤調整に関しては、本人の消化器症状に合わせて栄養剤の調整を連日施行・確認を行っており、的確な栄養管理をされていると感じた。
5日目(11月15日)
9:15~12:10 肝胆膵疾患患者への管理栄養士の関わり方
- 患者割合の説明
- 周術期チームの説明
- 栄養ケア・栄養指導見学
12:10~12:45 検食
13:15~13:50 緩和ケア病棟の多職種カンファレンス見学
13:50~14:20 緩和ケア病棟のナースミーティング見学
14:20~15:10 胃癌術後外来患者の栄養指導見学
15:10~16:20 論文・学会発表・栄養管理に関する資料の説明
16:20~18:10 まとめ
- 肝胆膵疾患患者は、がんの術前術後の患者が多く、特に膵癌の術後患者さんに対して、多くの栄養管理をされていた。担当管理栄養士の先生は患者さんの栄養状態だけでなく、状態と今後の治療方針、控えている手術の栄養管理に関するリスクまで細かく把握されていた。論文やエビデンスを踏まえており、的確な栄養管理をされていると感じた。
- 多職種カンファレンス、緩和ケア病棟患者の病態・疼痛管理・安静度・鎮静などに関することを医師・看護師・管理栄養士・(薬剤師)などで話し合われており、チーム医療がしっかりなされていると感じた。
- がん研有明病院の栄養部発信の論文や研究内容を教えていただき、普段の業務をこなしている中で治療や栄養管理に関する疑問点を見つけ、研究につなげ、多くの論文や本を出版されていた。研究結果などは最終的に患者に還元され、最良な栄養管理につながっていると感じた。
まとめ
何を学んだか
- 病院での管理栄養士の在り方
今後、何を教育・臨床にフィードバックしたいか
- 自院の入院患者へきめ細やかな栄養管理
そのための方策 いつまでに、どのような形で
- 帰院後より病態把握・治療に関する知識の自己学習や医師・看護師・薬剤師から専門的知識の学習を行い、入院患者の食事内容調整や輸液内容の確認・調整、栄養指導など最良な栄養管理を行っていきたい。
今回の研修について
- 栄養指導内容、細かい食事調整等、有明病院様でされているがん患者への栄養管理・対応について理解できました。管理栄養士の先生方にとても熱心にされている栄養管理業務を間近で見学させていただき、私自身への良い刺激になりました。
- 診療科別で管理栄養士の関わり方や栄養指導の見学を多くさせていただき、栄養管理に関することの多くを吸収することができました。どのセッションでも、癌患者に対する栄養指導の見学と、栄養管理の方法を詳しく説明していただきました。
- また、研究も多くされており、研究結果を患者の栄養管理に還元され、良質できめ細やかな栄養管理をされている事が印象的で病院管理栄蓑士の在り方を改めて再認識することができました。